落書きだらけの夢を見るのさ
こんにちは。
ぼくです
◆前回までのあらすじ
事前のリーク情報により次回の聖☆守護者は植物属性であると聞いたスピーカー。参加した邪神で奇跡的に手に入れたのは植物特攻9%に攻撃魔力+24のベルト。魔法使いの呪文ダメージキャップも繰り上げられたことを知っていたスピーカーは「これは神ベルトだ」と信じ込み早速フレンドに自慢するお調子者のスピーカー。どうなる。
気付けば今日だった
なんとなく思い込みで四月末頃に始まると思っていた守護者が実は17日に解禁とのことで「ちょっと想像してたより早かった」と感じたぼくは突然大掃除に励んだりなんとなく本棚の整理を始めて昔集めた漫画を最初から読み直したり完全にテスト前に勉強したくなくなるみたいなアレ状態 IN MY HEADです。自分ひとりで勝手に作り上げた忙しさを言い訳にログインを渋っていたわけですが一体この現象は何なんでしょうね? もう肉体がドラクエにログインしたくなくて自然とコントローラーを持つ指が動かないんでしょうかね? お母さんに
「ビルダーズ2ばっかりやってないでそろそろドラクエXもログインしなさいよ」
とか言われたら
「っせーなババァ! ちょうど今からログインするつもりだったのに今の一言で完全にやる気失せたわー。ワンタイムパスワードトークンアプリのアイコンも今ので消えたわー」
等と言い返すのでしょうか? 返さないですね~。じゃあログインしろよ!? ってこれを読んでるアタナは思うかもしれないんですけどでも今週の金曜日に親知らずを抜歯するのでちょっとログインするかわかんないです。色々と心の準備があるのでもう十日くらい前からずっとそういうログインするとかしないとかいう呑気な心境ではいられないんですがやりたい気持ちがないわけではないんですいやマジで。
「ログインはしたい……けど
今更ログインするのも ちょっと気恥ずかしいナァ~!」
なんて
世の中には ぼくのように
暫くログインしていなかったドラクエに対して
「もう一度ログインするタイミング」を見失ってしまっている方が
10万人くらいいると思われますので
今日はそんなゼルメアと化したお前らのために
「もう一度ログインするタイミング」
を伝授いたしますのでご清聴ください
★今日から使える! ドラクエ復帰のタイミング100選★
タイミング①
大型アップデートのとき
「アプデ当日は親が死んでも有給とれ」との偉人の言葉にもあるように
大型アップデートの行われた日~翌々日は引退したプレイヤーがこぞってログインする日です
大量の復帰勢に紛れてしれっとログインできる最良のタイミングといえます
オススメ度……★★★★☆
(☆マイナスの理由:そもそもログインしなくなった原因である嫌いなあいつも同時にログインする可能性が高い)
タイミング②
嫌いなやつが引退したとき
※人間関係はイメージです。
オススメ度……★★☆☆☆
(☆マイナスの理由:こういうやつはだいたい引退しない)
タイミング③
「俺さ、バンド抜けるわ」
言葉に力があるのなら、岩井の一言はまさしく暴力だった。スタジオの空気は一瞬で凍り付き、沈黙が流れた。接続の悪いアンプから、耳鳴りのように続くハウリング。その振動でハイハットが自然とチリチリと音を立てていて、それが妙に耳に響いた。
まるで大きな地震のくる寸前みたいだ。三島は思った。
震源は当然、岩井だ。
岩井は三島の組んでいるバンドのドラムス『ローリング・ヌー』の古株で、メンバーの中でも特に技術があった。他のバンドもいくつか掛け持ちしていて、プロになる噂も流れていた。
岩井は、いつか脱退するかもしれない。そうなることは誰もが予感していたはずだった。しかし同時に、この時間が続くことを信じていたのかもしれない。まるで根拠もない淡い期待。それは突如として打ち砕かれ、この瞬間、バンドの足元はいとも簡単に崩壊したのだった。
「岩井ちゃん……プロになるの?」
沈黙を破ったのはボーカルの滝口だった。餌を貰い損ねた雛のようなおちょぼ口で、岩井を上目遣いで見つめて訊いた声が少し震えていた。
「いや、音楽はもうやめようと思うんだ」
申し訳なさそうに答える岩井の答えは、意外なものだった。三島も、てっきり岩井がプロの道を目指すものだとばかり思っていた。沈黙を引き受けて岩井は続けた。
「大学院の方が忙しくて。俺もそろそろ、将来を見据えないとなって」
(将来か……)
ふんだんに白けた雰囲気を部屋いっぱいに残したままその場は解散し、深夜営業のスタジオの出口で岩井と別れた。受付で支払いを済まして外へ出ると、真夜中の四月の風が強く吹いていた。ベースの山上は無言のまま原付を走らせ先に帰ってしまい、残された三島と滝口はとぼとぼと歩きだした。背中に担いだレスポールが、やけに重い。
三島は岩井の言葉を頭の中で反芻した。
将来。
耳に痛かった。
大学を中途で退して、就職するでもなく、アルバイトでその日暮らしの毎日。三島にとってバンドは甘い現実逃避でもあった。「音楽をやっている」という肩書だけが世間に対しての見栄だった。特に才能があったわけではない。ただ、学校を卒業してからずっと続いていたものが、バンドだったというだけのことだった。
これから。どうしよう。
三島が隣をふと見てみると、いつもはうんざりするほど饒舌の滝口が、地蔵のように押し黙っている。
「酒でも、飲み行く?」
「いや……金、ねぇし」
「あぁ~……ねぇ」
じゃあ。って立ち寄ったコンビニで発泡酒を買い、道すがら飲んだ。アルコールは順当に効いたが、会話が弾むはずもなかった。
中途半端な練馬の繁華街。過ぎて行くネオンの色。騒ぐ学生たち。落ちているゴミ。酔っ払いのでかすぎる独り言が現代政治を批判している。まとまらない頭のまま、流れていく景色を後ろに見送って歩いた。夜の闇の中に光る明りが妙に眩しく思えて、スタジオからほど離れた駐輪場に着くまで、三島は無言のままだった。
錆びたキーを差し込んで実家から持ってきた自転車に跨った。程なくして後ろに滝口が乗る。スタジオの帰りはいつもこうして滝口の部屋まで送っていた。こうしてこいつを送ることも、もうないんだろうな。三島はそんなことを思った。
人通りのない裏通りをゆっくりと走った。切る風が、発泡酒で少しだけ熱くなった体に心地よかった。ため息が白く浮かぶ。見上げた練馬の空は曇っていて、伸びた電線も星を隠しているようだった。
何してんだろう。俺。
大きな挫折じゃない。
大きな希望があったわけじゃない。
明日からも、生活は続く。ただ、時間の使い方が、少しだけ変化するだけだ。そう自分に言い聞かせた。
ふと、昔見た映画のワンシーンを思い出した三島は、ちょっと声色で、その映画の台詞を言ってみた。
「俺たちさぁ……もう終わっちゃったのかなぁ」
しばらく待ってみたが、滝口の反応はない。
仕方がないので、一人で続けようとして、
「まだ……」
「まだ始まっちゃいねぇよ」
振り返ると、半笑いの滝口と目が合った。
三島も笑った。
薄曇りの空の向こうから、真っ白い朝日が微かに降り注いだ――
答え:そういうとき